どうやって登る? 4つの登山プラン


富士登山の計画を立てる時に最も悩ましいのが登山スケジュールです。いつ登るのか、誰と登るのか、メンバーの体力や富士山に登る目的などによって変わってきます。大きく分けると、日帰りか山小屋に宿泊するか、日帰りの場合は(1)日中登るか、(2)夜出発して山頂でご来光を迎えるか、山小屋に宿泊する場合は、(3)山小屋を未明に出発して夜行登山して山頂でご来光を待つか、(4)日の出後に山小屋を出発するか、の4つになります。

  日帰り登山 日帰り夜行登山 ご来光1泊2日登山 充実1泊2日登山
体力・疲労
ご来光
山小屋泊    
ポイント 早朝から山頂を目指し夕方には下山する日帰り登山
早朝、日の出とともに五合目を出発し夕方には下山する日帰りプラン。同じ日帰り登山でも夜間登山に比べ、暗闇の中を登ることなく余裕をもって登山することが可能。朝が早いので前日のうちに五合目に到着しておく必要がある。また、予定が遅れると日没後も下山することになるので、念のため懐中電灯は必須。
夜出発して山頂でのご来光を目指す夜行登山
夜8時頃登山口を出発して、山頂でご来光を迎え、午前中には五合目に戻るプラン。スケジュール的にお手軽ではあるが、夜間登るため、ヘッドランプの予備電池や防寒対策・体調管理など十分注意が必要。また山頂付近でのご来光は激しく混雑するため、計画には余裕を持たせて。体力的・精神的に1番ハードなプラン。
山小屋に1泊して山頂でのご来光を目指す
登山口をお昼頃出発し八合目か九合目で宿泊、未明に山小屋を出て山頂でのご来光を目指すプラン。時間的にゆとりを持って登ることができるご来光ベストプラン。翌日は出発が早いので朝食は山小屋でとれないが、事前に頼んでおけば弁当を用意してくれる。1日目は早めに山小屋に入りゆっくり休んでおくとよい。
じっくり時間をかけて登る充実の富士登山
中腹の七合目か八合目で宿泊して、翌朝ゆっくりと頂上を目指す、山頂でのご来光にこだわらないプラン。一部を除いて殆どの山小屋からご来光を拝むことが可能。じっくり時間をかけて自分のペースで登ることができるので、特に初心者や子供と一緒に登るにはおすすめ。登山時間が長いので水分・携行食は多めに準備を。
         

※タイムスケジュールは目安です。利用する登山道や個人の体力差、天候や混雑状況により大幅に変わります。

山小屋に宿泊するか考える

巨大な2段ベッド(富士宮口 池田館)

巨大な2段ベッド(富士宮口 池田館)

1つの布団に枕が2つ並ぶ(須走口 江戸屋)

1つの布団に枕が2つ並ぶ(須走口 江戸屋)

まず最初に考えたいのが、山小屋に宿泊するかです。“山小屋に宿泊”といっても、下界のホテルや旅館に泊まるのとは大きく違います。まず当然のことながら入浴施設はありません。そして大抵の場合、通路を挟んで両脇に上下2段に分かれている大きな2段ベッドのような空間があり、そこに布団が敷き詰められています。空いている時は、1人1枚の布団に寝ることができ、グループとグループの間をあけてもらえることも出来ますが、混雑時は1枚の布団で2人寝ることが殆どで、かろうじて掛け布団が1人1枚利用できるかどうかというところです。

そんなわけですから、思うように寝返りを打つことさえままならないこともあります。すぐ真横には全く知らない赤の他人の顔がデデ〜ンとあったり、どこからか鼻水をしきりにすする音が響いてきて気になってしまったり、上の段に寝る人のイビキが豪快で煩かったり。ある意味、イビキをかいて眠れる人は幸せです。また山小屋は思っている以上に寒いです。寒くて眠れなかったり、かえって高山病が悪化してしまった友人もいました。

さて、それでも山小屋に泊まりますか?

私は、それでも山小屋に泊まります。だって、疲れているし外はもっと寒いですもん

最初の頃はずっと夜行登山を続けてきました。夜の富士山では気温は0度近くになり、強い風が吹き付けると体感温度はもっと下がり、耳も鼻もちぎれそうに寒くなります。雨が落ちてくると生きた心地はしません。休もうにも野天で腰を下ろせば体は冷えきってしまい、しまいには立ち上がる気力さえなくなってきます。そんな時、山小屋の明かりと漏れ出てくるモワァ〜とした暖気をどれだけ恨めしく思ったことか。雨風をしのげる屋根があって、煎餅布団とはいえ横になれるだけでもめっけもんです。ただし、山小屋の宿泊料金は1泊2食付きで7,000円以上することが殆どです。そこを割り切って利用できるかどうかが大切なポイントになります。

日帰り夜行登山の心構え — 山頂でご来光を迎えるために —

どうしても山頂でご来光を迎えたい、スケジュール的に夜登るしかない、山小屋は利用したくないなど、日帰り夜行登山をする時のいくつかのポイントを紹介します。

まず知っておきたいのが夜行登山のデメリット。夜、暗闇を登るのですから視界は悪く足下がよく見えません。また気温は著しく下がり0度以下になります。登山道にある山小屋は宿泊客を優先としているため、夜間は営業をしていないこともあります。そして山頂付近、ピーク時には八合目付近からご来光渋滞で登山道は混雑します。

ご来光間近の山頂付近の登山道・頂上まで延々と人の列が続く(富士宮口)

ご来光間近の山頂付近の登山道・頂上まで延々と人の列が続く(富士宮口)


五合目には早めに到着しておく

理由は2つあります。まずは高山病予防のために五合目でゆっくり休み、時間をかけて体を高度に慣らすこと。特に夜行登山では体力・気力ともに激しく消耗します。十分な準備が必要です。もうひとつは、ご来光渋滞を避けるために早めに出発したいこと。環境省による平成21年度の富士山登山者数の調査によると、吉田口登山道では八合目付近を通過する人のピークは23時から24時で、この人達は19時から20時くらいに五合目を出発したと考えられます。ということは、少なくとも19時頃には五合目を出発する、その1時間前の18時頃には五合目に到着しておきたいものです。

ヘッドランプは必須・予備の電池の用意を
当然ながら登山道は真っ暗ですから足下を照らす灯りが必要になります。この灯りですが、私は迷わず両手が自由になるヘッドランプをおすすめします。懐中電灯でも良いのですが片手が埋まってしまうため、急な傾斜を登る時や転倒しそうになった時に両手が使えません。また、懐中電灯を握り続けていると手が疲れます。ストックや金剛杖を使用するのであれば、両手が埋まってしまうことになり慣れない人はバランスを崩しかねません。もし、どうしても懐中電灯を使用する場合は紐をつけて手首に巻き付けておくと、万が一手から滑り落ちても無くさずに便利です。なお、夜は長いです。事前にライトの連続使用可能時間を確認して予備の電池を用意することを忘れずに。

飲料・携行食・ホッカイロの準備は万全に
登山道にある山小屋は宿泊客が優先なので、夜間(特に深夜)は営業をしていない小屋もあります。夜行登山では、仮に五合目を19時に出発したとすると、翌朝4時過ぎまでの約9時間を登り続けることになります。この間、万が一山小屋を利用できなかった時のことを考え、最低でも頂上までの飲料と携行食は十分に持っていく必要があります。また、ホッカイロは必須です。

mont-bell(モンベル)エマージェンシーシート 350円

mont-bell(モンベル)
エマージェンシーシート
350円

頂上へ早く着いてしまったら
上手くご来光渋滞も回避でき、無事に頂上へ着いたら、次はご来光を待つことになります。気温は夜が明ける直前がもっとも下がります。そんな中、じっとご来光を待つのは寒さとの勝負です。寒さで体はぶるぶる震え、歯はガチガチなり、恋人同士でなくとも、相手が見ず知らずの人であろうと、ともかく誰でも良いから寄り添いたくなります。(少なくとも、私は)
ホッカイロを体中に貼るのも手ですが、寒風の中ではあまり効果がありませんでした。そこで是非持参したいのがエマージェンシーシートです。エマージェンシーシートとはアルミを蒸着したポリエステルフィルムのことで、見た目は銀色のペラペラのシートです。これを体に巻き付けてすっぽり包まれば、身体から放射される熱を反射してくれるので、体温の低下を最小に抑えることができます。アウトドアショップなどで数百円で購入できますが、お店によっては100円ショップでも売っているようです。もし余裕があるならば、保温マグに温かい飲み物を入れておけば、とても幸せになれます。

前日の睡眠・当日の仮眠は十分にとっておく
徹夜で登山するわけですから、睡眠不足は大敵です。登ったら、言うまでもなく下りてこなくてはなりません。早くても五合目に下山できるのは午前9時過ぎになります。ともかく寝ておきましょう。

“平成21年度の富士山登山者数について – 富士箱根伊豆国立公園[環境省]”より引用

[4] 平成21年度における時間別登山者数の推移

吉田口登山道では、夕方から夜間にかけて多くの登山者が8合目を通過しており、16時から17時までの夕方(※1)と23時から24時までの深夜(※2)に2つの登山者数のピークが認められました。

富士宮口登山道では、午前中に8合目を通過する登山者が多いものの、夜間登山者も多くみられました。須走口や御殿場口登山道においても、夜間登山者が見られます。

(※1:富士スバルライン五合目から登り始めた場合は13時から14時くらいに出発したと想定されます。)
(※2:富士スバルライン五合目から登り始めた場合は19時から20時くらいに出発したと想定されます。)

早朝から山頂を目指し夕方には下山する日帰り登山 — 本当に日帰りできるか? —

早朝、日の出とともに五合目を出発して、夕方には下山する日帰りプラン。日帰りとは言えども、いくつか考えておきたいことがあります。まず夕方、というよりもその日のうちに下山するには早朝から登り始めなくてはなりませんが、登山口までどうやって行くかという問題です。

マイカーで行く場合は、マイカー規制期間以外であれば前日の夜に着いて車内で仮眠をとれます。下山後もマイカーなら特に時間の拘束もありませんから、問題はなさそうです。マイカー規制期間中の場合はシャトルバスを利用することになりますが、シャトルバスの始発は6時前後です。30〜40分で五合目に到着したとして30分くらい高所順応で時間をとると、早くても出発は7時以降になってしまいます。ただ、五合目出発の下山シャトルバスの最終は22時〜23時頃なので、それまでに下山できれば問題なさそうです。

一方、公共の交通機関を利用する場合、河口湖口(吉田口)行きバスの始発は、7:20に河口湖駅を出発します(※2010/7/1〜8/31)。およそ1時間で五合目に到着するので、それから最低でも30分五合目に滞在すると、出発は午前9時頃になります。五合目発の下山バスの最終が22:10(※2010/7/1〜8/31)なので、それまでに下山できれば良いわけですが、吉田口登山道の標準所要時間は登り約6時間40分、下り約4時間の合計10時間40分です。この通りに行って帰って来られれば20時には五合目に戻れる計算になりますが、恐らく無理でしょう。そうなると、最終バスの22時までに下山できるかどうか?何度か富士山を経験していてコースタイムをある程度把握できている人なら可能かもしれませんが、初めての方には多分難しいと思います。

同様に富士宮口の場合は、新富士駅発の始発バスは8:30(※2010/7/17〜8/31)、五合目までの所要時間が約2時間15分なので出発は11:00を過ぎてしまいます。この時点で難しそうなことは既にわかるのですが、さらに、五合目発の新富士駅行き下山バスの最終は18:00。どうしたって無理です。

富士宮駅利用を考えてみます。富士宮駅を通過する登山バス路線の始発は新富士駅ですが、早朝に2便だけ富士宮駅始発の便があります(7:30 , 8:30)。7:30の便に乗車すると五合目到着は8:50の予定です。そうすると、早くて9:30には出発できそうです。富士宮駅行き下山バスの最終は19:00(※2010/7/17〜8/31)なので、登山できる時間はおよそ9時間強あります。富士宮口登山道の標準所要時間は登り約5時間30分、下り約4時間の合計9時間30分です。やはりこちらも難しそうです。

須走口はどうでしょうか。御殿場駅発7:10の始発バス(※2010/7/1〜9/26)に乗車すると、須走口五合目には8:10に到着するので9:00前には出発できそうです。五合目発下山バスの最終は20:30なので、約11時間半あります。須走口登山道の標準所要時間は登り約7時間、下り約3時間30分の合計10時間30分です。河口湖口(吉田口)同様、何度か富士山を経験していてコースタイムをある程度把握できている人なら可能かもしれませんが、初めての方には多分難しそうです。なお、20:30発の下山バスは2010/7/1〜9/5の金・土・日・祝日と2010/8/12〜8/16の間のみの運行です。この間以外の下山バスの最終はもっと早くなるので、やはり公共の交通機関を利用した日帰り登山は難しくなります。

御殿場口については、経験者以外の日帰り登山は考えにくいので、ここではふれません。

結論:
日帰り登山をするならマイカーを利用。
経験者ならバス利用でも吉田口・須走口なら可能かも。

山小屋に宿泊するなら早めの到着を

ほとんどの山小屋では、食事時間と消灯時間が決まっています。夕食の時間ギリギリに小屋へ到着すると、息つく暇もなく食事をとり、バタバタと寝床に案内され、荷物の整理をしたかしないかで消灯時間になってしまうこともしばしばです。そんなせわしない状況で、ようやく寝付けそうかなと思ったら、山頂でのご来光を目指す人はすぐに出発時刻になってしまいます。

せっかく山小屋に宿泊するのであれば、もう少しゆっくり落ち着くためにも、早めに到着することをおすすめします。できれば16時〜17時頃までには山小屋に入り、ストレッチをしてからお茶を飲んだりしてくつろぐ。荷物の整理をしたり、ゴロゴロしたり。夕食をいただいた後は、外で日暮れを楽しむ。富士宮口であれば、天候次第では影富士(夕日を受けて富士山の影が裾野に映る景色)を見ることもできます。

富士宮口八合目池田館から影富士を見る(2006年8月3日)

富士宮口八合目池田館から影富士を見る(2006年8月3日)

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